カテゴリ:戦前松竹( 28 )

母の戀文(私のツボ)

この映画は昭和10年に作られたコメディです。
主役の坪内美子さんは下の写真の向かって左。
全篇を着物で通すモダンな和美人で真ん中の男性良一と結婚します。
向かって右の洋装女性は高杉早苗さん、彼女は良一の妹です。
物語は、美子さんが良一と結婚してすったもんだがあって、
その最大の危機となった恋文が実はお母さんの書いたものであった、
という結末で大団円を迎えるのですが、
物語には関係なく私のツボを並べてみます。
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美子サンが初めて良一の家に来て弟(突貫小僧)にお菓子を渡す場面。
この高台にのったお菓子はどうも固そう。指でつついても弾力がありません。
トングでケーキをはさんでいるところを見ても、
固そうで噛んだらサクっといいそう。
この頃の映画にはたまにでてくる固いケーキ、気になります、、、。
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早苗さんは洋装派で寝るのもベッドでパジャマです。
もちろん既製服ではないパジャマ、たっぷりっとした生地で気持ち良さそう。
枕のカバーや布団がなんとなく和風をひきずっています。
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全身のパジャマ姿もサービス。
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美子サンの女学校時代のお友達と偶然道でバッタリ出会いました。
えっちゃんとかいうこのお友達はお洒落な洋装。
美子さんと同級生という設定なのに年上っぽくてしっかり者という感じ。
この女優さんのせい?と思って調べてみました、
松井潤子さんという方なのですが、
ナント後に水原茂氏の奥様になられます!
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アップもサービス、モダンな洋装なのにどこか庶民的な感じです。
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この映画はテムポが早くて場面が切り替わる時に芝居のように暗転します。
そしてこんな場面が突如映し出されるのです。
なんてことのない場面ですが、モダンなコーヒィカップ、欲しい!
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吾が愛しの徳大寺伸の登場です!かっこいー!
早苗さんの恋人で医学博士?らしく「血液型の研究論文」を書いていて
それが仕上がったら結婚するんですって、いいなあ。
こうした喫茶店での場面はいつ見てもスバラシイ。今となんの遜色ありません。
こういう意匠の喫茶店どこかにないですか?
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この映画で一番の場面。
お勝手というよりはお台所ですね、キッチンと言っても良いかもしれません。
可愛らしい卓上のガス台に脚付きのまな板、広い作業台が羨ましいですね、
そして明るいのが一番素晴らしい。清潔そうで使いやすそう。いいなあ。
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サービスショットはこの台所の横手に見える冷蔵庫?らしきものと、
その上のお醤油の容器と思われるもの。陶器製らしい?
たぶんお醤油だと思うのですが大きいですよね!
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この場面はどうでもよい宴会シーンなのですが、徳利にご注目です。
この徳利が空になったといって良一は「お酒ちょうだい!」と叫びました。
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そしてこの場面。お母さん(吉川満子!)は樽のお酒をまず片口に入れて
そこからお銚子にそそいでいます。
その横で早苗サンがもう一本のお銚子を手にしています。
こういう何気ない暮らしの一場面が大好き。
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良一の家の近所です、広い道はまだ舗装されていず雨が降ったら難儀でしょう。
家々には電気がひかれているのもわかります。
どんな暮らしをしていたのか、お邪魔してみたいな。
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最後は問題の恋文です!
「30年前に私が書いたのです」とお母さんが言いました。
1905年ということになりますが、明治38年日露戦争の頃です、
ノンキだなぁお母さん。
これをもらった今は亡きお父さんは大層喜んだそうで、
良一くんができてしまい結婚することになったのだとか。
こういうお手紙を書くひとが!と少し驚いたのでした。
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それでは本当の意味でのサービスショットです。
最後の場面、喫茶店のボーイさん(阿部正三郎)。
最初のクレジットの中で最後の最後に出てきたお名前。
だれ?と思っていたら、この方、、、
見たことある、ある!与太者のひとでした。色々調べてみて見ると、
阿部正三郎も女中役で出ていた出雲八重子さんも徳大寺伸さんも
同じこの頃に松竹の準幹部に昇格したそうです。
わぁ!なんだかワクワクしてきます。
(同じ年にかの田中絹代嬢は大幹部に昇格されました、さすが!)
この頃の映画界はその年間製作数を見てもどれだけ栄華を極めていたか
がよくわかります。
映画を一本観ただけでもその雰囲気を味わえるような気がします。
 きら星のごとくゐならぶ映画スタア ひときわ輝けり大幹部
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昭和10年・製作=松竹キネマ/監督・野村浩将
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by orochon3 | 2017-04-04 16:20 | 戦前松竹 | Comments(0)

「母の戀文」のDVD

ずいぶん前になりますが、御影のクラッセの催事で
新旧DVDのセールをしていました。そこで見つけたお宝です。
内容は古い映画なのですが中古ではないDVDで、なんと360円というお値段!
昔々に東宝から発売されていた古い映画のビデオは数千円でしたから
なんと良い時代になったことでしょう。
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この作品は10年以上も前にケーブルテレビで放送されて見ました。
その時の記事はコチラ →  です。
もう12年も前のことでなんとちょうど同じく4月に見ていました。
あの時にテレビで見たよりもずっと鮮明な画面で音声も聞き取りやすく、
とても良い買物をしたと思います。

で、感想はというと12年前とほとんど変わらないのですが、
1935年、昭和10年の作品だと思うと一層好ましく思ってしまう私です。
全篇に流れるお洒落な雰囲気と台詞まわしは80年経ったいまでも
充分に通用しそうなくらい。
こまごまとしたツボはまた改めてゆっくりとご披露したく存じますが、
やっぱり私には1930年代の記憶があるように思えてなりません。
何かどこかでご縁があるのだと信じているのですが、、、。
 スクリーンにうつる街並なつかしくあるはずのない記憶をたどる

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by orochon3 | 2017-04-03 15:27 | 戦前松竹 | Comments(0)

美しき隣人 & 女

水戸光子サンの戦前戦後作品を奇しくも続けてみることになりました。

「美しき隣人」は昭和15年。
国策映画でもありますが、松竹大船調のかおりは感じられます。
都会のオフィスで有能だった邦子(光子サン)は、お兄様の出征のため、
一人残されたお母様を助ける為に田舎に帰ります。
今では「田舎」と言っても都会とそうそう変わりませんが、
当時の田舎は、まったくの農村。家の中に馬を飼っていて、
その馬が家の中でもっとも大切な存在として扱われています。
洋装で舞い戻ってきた邦子は、あっという間に野良着に着替えて、
しかもそれがまたすぐにしっくりくるところがスゴイ。
当時の女性の体型の成せる技なのでしょうか、野良着がキレイ。
映画の内容は、農村に戻り、幼なじみの男性と将来を誓い、
しかしその男性は満州開拓団となって彼の地へと旅立ちます。
彼に一度はふられ、じっと耐えていると彼から手紙が届いて、
最終的には満州では邦子が必要だと説かれて嬉し涙で追いかける。
うぅぅん、、、その行く末を知っている私には辛い結末ですが、
当時としてはハッピーエンドなのでしょうね、ハァ(ため息)。

昭和15年/松竹大船撮影所/監督・大庭秀雄


そして、戦争に負けて何もかもが欠乏していた昭和23年。
「女」は木下恵介監督の作品です、詳しくはこちらをごらん頂くと良いと思います。
たった8年で、水戸光子サンはガラリと変貌してしまいました。
もし、私が出征していて、敗戦と共に母国の土を踏み、
どこかの映画館でこの映画を観たとしたらモノ凄いショック!!
自我に目覚めて、情夫を見捨てる「女」の中には、
もう男の一言一句で右往左往する邦子はいません。
飛び出したお嬢さんでネグリジェ姿だった水戸光子にも驚きましたが、今回はスゴイ。
まぁ、、、と言って瞳をウルウルさせるアップシーン多用の、
かつての日本映画に存在していた女優さんではなく、
強くて自分の足で地を踏みしめて行きて行く一人の女を演じます。
グリア・ガースンのようなスーツを着て、すれっからしを演じる。
これが、戦争が終わったということなのかしらん。
この映画は木下恵介監督の実験的な作品だということですが、
確かに、当時では斬新だったのかもしれません。
斜めに傾いた画面、口元のアップのみ、目元のアップのみなどの画面。
けれど、今となっては新しさはなくただ見辛いという感想かも、、、。
斬新といえば溝口健二監督の「浪華悲歌」とか、
村山知義監督の「恋愛の責任」などは今見てもものすごく斬新!だと私は思うのですが。

昭和23年/松竹大船撮影所/監督、脚本・木下恵介


今回の二作品、どちらも私的見所は少ないのです。
ただ「女」の最後で、熱海での火事の場面で当時の熱海温泉街が
いろいろ楽しめました。
木造3階建ての旅館がとても多いようです。
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こちらは「湘南」という看板がちらりとみえています。
立派なホテルのような旅館です。
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左の看板にみえる「山木旅館」というのはまだ熱海で営業されているようです!
ホームページはこちらです。行ってみたいなァ。
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by orochon3 | 2012-10-21 18:20 | 戦前松竹 | Comments(0)

晴曇

歳も押し迫ったこの時に、こんなことを書いている私は、
かなりヒマな人なのだろうなあと思いつつ、忘れないうちに。

久しぶりの松竹です。
なんと栗島すみ子嬢と田中絹代嬢の二大女優夢の競演!
どちらも大好きなので比べられませんが、やっぱり絹代チャンかなあ。
久米正雄原作のこの作品は、珍しくも2時間という長さ。
しかし見応えある力作と感じました。

あらすじは、大学生の男子二人とそれぞれの恋人(すみ子嬢と絹代嬢)、
すみ子嬢は実業家のお嬢さま、絹代ちゃんは下宿の娘。
お二人とも和装ですが、見事に貧富の差が見てとれます。
すみ子嬢のお部屋なんて童話のお姫様のお部屋みたいです。
しかし、絹代ちゃんを恋人にもって男女の関係にまで進んでいた筈の
黒田くん(珍しい悪役の大日向伝)は、野心をメラメラもやして
すみ子嬢に近づき、するりと入り込んで結婚してしまいます。
その時には絹代チャンは既に身籠っており、涙、涙。
よくあるパターンではありますが、元すみ子嬢の恋人で、
親同士で入り婿の話まで出ていた辻村くんが、誠を持って救います。
僕がお腹の子の父親になろう、と覚悟を決めて二人も結婚!

黒田くんとすみ子嬢の結婚式はかの帝国ホテルライト館でした。
舞台では二人の美女が舞を舞って、参列客をもてなします。
場所を移って披露宴会場は長いコの字のテーブルプラン。
もちろん洋食のようですが絹代チャンが途中で気分が悪くなり、
何故か新郎新婦の控え室で横になりますが、、、。
これはホンモノの客室ではなくてセットでしょうね。
見たかったです、当時のナマ・ライト館の客室。

最後は悲劇的というかなんというか意味不明でした。
こういう時、やっぱり時代の差を感じてしまってカナシイ(涙)。

ともかく、すみ子嬢の絢爛豪華さと絹代チャンの可憐さを堪能!
年末に良いものを見せて頂きました。
吉川満子サンはやっぱり母親役なんですね、ここでも!

昭和8年/松竹蒲田撮影所/原作・久米正雄/監督・野村芳亭
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by orochon3 | 2010-12-31 15:26 | 戦前松竹 | Comments(0)

春雷

「大船絢爛派と純情派との競演譜!」
と当時のちらしに謳われていたそうですが、
小暮実千代をあまり贔屓にしないワタクシには、
彼女を絢爛派というのはちょっと賛成しかねます。
川崎弘子の純情派には大賛成ですが。
結局観終わってもどちらが主役だったのかわかりません。
最後に見せ場をとっていっちゃった小暮さんなのかなぁ。
いきなり良い人になって、大金もポンと出しちゃって、
ようやく結ばれた二人が乗った自動車を見送る後ろ姿は、
美しく、ヒールがよく似合う脚が印象的でした。
ワタクシ的には特別出演の田中絹代嬢がピカイチ!
ほんのちょっぴりの出演でしたが。

さて、お話はというと、これを“波瀾万丈”と言わずして
何を波瀾万丈と言うのか、というくらい波瀾万丈でした。
「愛染かつら」などの松竹の作品は波瀾万丈が多いですが、
これもまたまた波瀾万丈。
さて波瀾万丈が何回出てきたでしょう?というくらいです。
次々とすれ違いが起こるのですが、どれひとつとっても、
今では考えられません。ホントに携帯って便利ですねェ!

それにしても。
当時の東京の様子がとてもたくさん出てきます。
こういう映像を見ていると、すいこまれていって、
はたと、現代を生きる自分に立ち戻り、嗚呼、、、残念ながら、
私はこの時代の人ではなかったのだとがっかり肩を落とすのです。
このガッカリ感というや、、、。
じゃあ、そんな映画観るなと言われそう。

昭和14年/松竹大船撮影所/原作・加藤武雄/監督・佐々木啓祐
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by orochon3 | 2010-04-25 16:29 | 戦前松竹 | Comments(0)

青春の夢いまいづこ

あんまり好きではない無声映画ですが、
大好きな絹代チャンが出演しています!
大学の隣にあるベーカリーの看板娘の役で、
おかもちを持って大学構内にも出没しています。

着物を着るようになる以前は、伊達里子サンのモダンな洋装や、
足下のクローズアップシーンの連続に目がハートになっていましたが、
着物の楽しみを覚えてからは、気になるのはやはり当時の着姿で、
これはお太鼓の感じがあまりに自然で見惚れてしまいました。
普段着どころかベーカリーで働く着姿。
ちゃちゃっと結んで前掛けをしめている、というのがこれだけでワカル。
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帯揚げは、看板娘の絹代チャンも令嬢役の花岡菊子サンも、
これだけどどーんと出しています。そして胸高に結んで。
若い娘さんらしく胸元がきちきちですがそこがかわいい。
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話の方は、ままありがちな内容なのでどうでも良いですが、
車窓から流れる街並がとってもキレイ、素敵な建物ばかりでため息。
そして、江川宇礼雄の濃い顔とさわやかな若社長がカッコイイ。
サービスショットは1930年代のOLさんたち。
若社長のうわさ話に花を咲かせております!
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昭和7年・松竹(蒲田撮影所)/監督・小津安二郎
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by orochon3 | 2009-04-27 10:03 | 戦前松竹 | Comments(4)

女醫絹代先生

カワユイ!カワユイ!
絹代ちゃんはなんでこんなにカワユイのかしら!!!
何もかもがちっちゃくて、ピカピカしてます。
映画の内容はまるっきりウレシイ少女マンガ。
それも1970年代の別冊少女フレンド(別フレと言いました)、
もしくはちょっと大人のmimiかな、、、どちらにしても講談社
というところがミソです。ラブコメディです、立派なアイドル映画です。
そしてお相手が佐分利信。その母親に吉川満子。言う事ナシ!

ちっちゃな筈のダットサンに乗っている絹代チャンは
もっとちっちゃくて、ダットサンが大きく見えます。
洋装でダットサンをのりまわし、ハイヒールのヒールを折れんばかりに闊歩する
佐分利信を好きになって、夜は寝間着でもの想いに耽るところもカワユイ。
何をしてもカワユイ絹代チャンですが、一番好きなのはちょっと眉をひそめて
怒った顔が一番魅力的ではないかと思います。もう首ったけです。

こんなファッションに身を包んで銀幕に現れます。

昭和12年・松竹(大船撮影所)/監督・野村浩将
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by orochon3 | 2009-04-13 07:15 | 戦前松竹 | Comments(0)

愛より愛へ

可愛らしい、可愛らしい。ともかく高峰美枝子嬢がめっぽう良いです。
素直で、心も姿も美しいお嬢さん、という典型ではないかと思います。
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佐野周二のお兄サマとその恋人の高杉早苗サン。
(奇しくも『争う美人姉妹』の直後で若かりし頃の早苗サン、美しい!)
この二人は親に許されず駆け落ちの身。その親とお兄サマの間を
軽やかにとびまわって二人を幸せにしてあげる、
文字通りキューピッドの役回りが美枝子嬢にぴったり。
二人を映画に誘って、お兄サマが煙草を吸いに席を離れた隙に、
そっと早苗お姉サマに母から預かったお金を渡すくだり、
美しい二人にみとれてしまいました。
服装、容姿、しぐさ、ことばづかい、全てにおいて美しい!
見習いたいものです。もう遅かりし・・・かも。ですが。
早苗サンはホステスさんをしてお兄サマを養っています。
その時のテロンとした'30年代型ドレスも良いですが、キモノ姿にも注目です。
半幅に帯締めでキチンと感を出していらっしゃる。
だらしのない女性ではないのですわよ、と背中が物語る。
そして、この着付け。
おせなの部分、脇を背中心へ向けきれいによせているのが
わかるでせうか。彼女は夜の商売をしていますが、
決して生活は乱れていませんヨ、とおせなが物語っているのです。
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このおせなを見ているのが、突然お兄サマを訪ねてアパァトへ
やってきた妹の美枝子嬢。
早苗サンのキチンとしている背中を見て、この方なら大丈夫、と
微笑んでいるようでありました。
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訪ねたアパァトは一間ですが流しもあり、なかなか住みやすそう。
「私、アパァトに来たの初めてよ、病院みたいね」とは美枝子嬢のご感想。

ラストで、ご両親に晴れて許された佐野周二お兄サマが、
早苗サンに電話で、うちに来てくれるね、と優しく言うと、
電話口で喜びのあまり泣き出す早苗サン。
「きみ、泣いてるの?」と言われた早苗サンは、
笑顔で「いいえ、笑ってますわ」と。
その台詞と笑顔にワタシまでつられてニッコリ。
いい映画でした。

昭和13年・松竹(大船撮影所)/監督・島津保次郎
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by orochon3 | 2006-09-11 22:38 | 戦前松竹 | Comments(0)

一人息子

シンキクサイ映画でございました。
がぁっくりしんどくなりました。

お話はこんなかんじですが、
そんななかで飯田蝶子サン、良かったです。
肩に手拭いをかけた姿がこんなに似合うヒトもいないでしょう。
坪内美子サンも良かったです。健気でしとやかで。

最後に、おっかさんが鏡台のところに残していった
お金と手紙を夫婦が見つけた場面では、ホロリとさせられました。
うぅぅん、でもそれだけでございました。
やっぱり小津監督とは相性悪いみたい・・・感性が合わないというか。
あ、それと笠置衆サンもダメなのだなぁ、ワタクシは。

大正末の群馬。のどかに手で繰っていた糸が、
昭和初期にはすっかり近代化されていました。
女工さん達にもお喋りや笑顔が消えていました。

昭和11年・松竹キネマ(大船撮影所)/監督・小津安二郎


こんな時は元気にお酒でも飲みましょう。
霊験あらたかな熊野の地酒、その名も吟醸酒「熊野三山」です。
和歌山県新宮の尾崎酒造さんです。
『世界遺産、熊野三山地域唯一の蔵元で、
霊峰奥熊野に源を発し流れ出る熊野川の伏流水を汲み上げ、
丹念に磨き上げた山田錦を用いて、丹精こめて醸す、伝統手造りの吟醸酒。』
という大仰な解説がついていまして、大仰なお酒かと思いきや、
まったりとしてでもキレもあって、バランスの良いお酒でございます。
スタイルの良い仕事もできる美人、性格も良し、でも出身は新宮、てな感じ。
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by orochon3 | 2006-05-25 08:47 | 戦前松竹 | Comments(2)

学生ロマンス・若き日

ようやく、久し振りに映画でも観ようかな、なんて気分になりました。
こんな時は、思い切りノンキでのどかなのがいいですね。
ということで、選んだ作品でございます。

無声です。音楽もなし、弁士もなし。たまぁーに入る字幕のみ。
ということは、ひらすら白黒の画面に見入る、見入る、見入る。
なんせ字幕がほんとにたまにしか出ないので、ほとんどは、推理です。
で、字幕を観て、軌道修正する、というおもしろい鑑賞の仕方でした。
疲れるけど、慣れるとおもしろいかも。
演じる人たちの表情がとっても豊かで、言葉や字がなくてもわかる部分が多い!

冒頭のモダンなタイトルに心ウキウキ!
もちろん字幕もあの読みにくいモダンな字体。いいですねぇ、アールデコ。
物語はこんなふうです。
特別おもしろいわけではないのですが、
試験の終わった早稲田のスキー部の連中が赤倉へスキーに行って、
夜、炬燵にあたりながら話をしている場面。
「こうしてると試験で覚えたことなんて忘れちゃうね」
「僕なんて忘れるから覚えなかったよ」
「おまえ、落第するよ」
なんていう会話が交わされるところで思わず笑ってしまいましたけど。
のどかでいいですねーえ。
もちろん、会話と言っても字幕が順番に出るだけなのですが。

シャン(美人という意)な千恵子役の松井潤子が、冒頭に、
バラ(もしくは牡丹)が大きく描かれた羽織を着て現れると、
画面がぐんと華やいできます、色がなくてもわかるのですね、こういうの。
引っ越しの場面ではその昔風の長い袂をわきに入れ込んで軽快です。

以下、心くすぐられた点を箇条書きにてまとめます。

・試験勉強で机にかじりつく学生・山本は、ホワイトアスパラガスの缶を
 机上に置いて直接指でつまみあげて食べている。
・千恵子の机上にはふさのついたかわいらしい電気スタンド。
・山本がスキー行きの為に用意したのは「美津濃」と書かれた箱に入った靴。
 一見ちょっとゴツイ革靴だけど、スキー靴らしい。
・町の中の掲示板に、貸間と書かれた貼り紙がズラリ並んでいる。
 全て、四半と六と書かれているところをみると、四畳半と六畳だったらしい。
・学生・渡辺は学校から帰ると学生服を脱ぎ、セーターの上から着物を着ている。
 毛糸の手編みの靴下を履いているけど、きちんと靴下止めをつけて履いている!
・スキー場のヒュッテでコーヒーを飲む学生達は、見覚えのある赤い(多分)箱から
 干しぶどうをバクバク食べている。
・若い千恵子は始終着物だけど、スキーをするときには何故かセーラーを着て、
 下はもちろんズボンだけど、かわいいベレー帽をかぶっている。
 普段の着物では、胸高に帯をしめて、衿はほとんどぬかないでいる。若々しい感じ。

特筆ものは、スキー場での学生達、特に結城一郎扮する渡辺。
細いパイプを加えてものすごく格好いいです!見直しました。
他の学生諸君もなかなかみんなお洒落揃い。
こういう人たちが、後に年をとっても格好いいお洒落なお爺サマになったのでせうね。

昭和4年・松竹キネマ(蒲田撮影所)/監督・小津安二郎
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by orochon3 | 2006-05-24 08:46 | 戦前松竹 | Comments(0)


主に戦前邦画と、思い切り偏った読書の感想などなど。近頃はもっぱらお酒ばかりで スミマセン。


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