美しき隣人 & 女

水戸光子サンの戦前戦後作品を奇しくも続けてみることになりました。

「美しき隣人」は昭和15年。
国策映画でもありますが、松竹大船調のかおりは感じられます。
都会のオフィスで有能だった邦子(光子サン)は、お兄様の出征のため、
一人残されたお母様を助ける為に田舎に帰ります。
今では「田舎」と言っても都会とそうそう変わりませんが、
当時の田舎は、まったくの農村。家の中に馬を飼っていて、
その馬が家の中でもっとも大切な存在として扱われています。
洋装で舞い戻ってきた邦子は、あっという間に野良着に着替えて、
しかもそれがまたすぐにしっくりくるところがスゴイ。
当時の女性の体型の成せる技なのでしょうか、野良着がキレイ。
映画の内容は、農村に戻り、幼なじみの男性と将来を誓い、
しかしその男性は満州開拓団となって彼の地へと旅立ちます。
彼に一度はふられ、じっと耐えていると彼から手紙が届いて、
最終的には満州では邦子が必要だと説かれて嬉し涙で追いかける。
うぅぅん、、、その行く末を知っている私には辛い結末ですが、
当時としてはハッピーエンドなのでしょうね、ハァ(ため息)。

昭和15年/松竹大船撮影所/監督・大庭秀雄


そして、戦争に負けて何もかもが欠乏していた昭和23年。
「女」は木下恵介監督の作品です、詳しくはこちらをごらん頂くと良いと思います。
たった8年で、水戸光子サンはガラリと変貌してしまいました。
もし、私が出征していて、敗戦と共に母国の土を踏み、
どこかの映画館でこの映画を観たとしたらモノ凄いショック!!
自我に目覚めて、情夫を見捨てる「女」の中には、
もう男の一言一句で右往左往する邦子はいません。
飛び出したお嬢さんでネグリジェ姿だった水戸光子にも驚きましたが、今回はスゴイ。
まぁ、、、と言って瞳をウルウルさせるアップシーン多用の、
かつての日本映画に存在していた女優さんではなく、
強くて自分の足で地を踏みしめて行きて行く一人の女を演じます。
グリア・ガースンのようなスーツを着て、すれっからしを演じる。
これが、戦争が終わったということなのかしらん。
この映画は木下恵介監督の実験的な作品だということですが、
確かに、当時では斬新だったのかもしれません。
斜めに傾いた画面、口元のアップのみ、目元のアップのみなどの画面。
けれど、今となっては新しさはなくただ見辛いという感想かも、、、。
斬新といえば溝口健二監督の「浪華悲歌」とか、
村山知義監督の「恋愛の責任」などは今見てもものすごく斬新!だと私は思うのですが。

昭和23年/松竹大船撮影所/監督、脚本・木下恵介


今回の二作品、どちらも私的見所は少ないのです。
ただ「女」の最後で、熱海での火事の場面で当時の熱海温泉街が
いろいろ楽しめました。
木造3階建ての旅館がとても多いようです。
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こちらは「湘南」という看板がちらりとみえています。
立派なホテルのような旅館です。
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左の看板にみえる「山木旅館」というのはまだ熱海で営業されているようです!
ホームページはこちらです。行ってみたいなァ。
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by orochon3 | 2012-10-21 18:20 | 戦前松竹 | Comments(0)