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「稲妻」林芙美子

映画の稲妻を観て以来、ずっと気になっていたことが、
すべて解決、気持ちがすぅっとしました。
原作と映画とは、まったく違うものだったのですね。

聡明な美しさをたっぷり漂わせる高峰秀子サンが演じた清子。
映画では、非常に清らかで潔癖に描かれていたので、
周囲の林芙美子ワールドの面々から一人浮いてみえました。
ところがどっこい、原作では、彼女こそ林芙美子の世界のひと。
そして全体に漂う林芙美子独特のよどんだ空気とだらしなさ。
これこれ、これでなくっちゃあダメなのですよ。
時代設定も戦前と戦後と全く違います。

昭和11年から書かれた原作では、時代背景からしてワタシ好み。
嘉助は満州の新京へ一旗あげに行くと言ったり、
(旅費は30円くらいだそうです)
光子は神田に「ミツ」というカフエを出したり、
綱吉は渋谷に「配達パン」という一寸した喫茶部のある店を建てたり、
と細かなところにあの頃を感じさせてくれます。

清子はその容貌にコンプレックスがあり、かなりやさぐれた風です。
複雑にからみあったしがらみから抜け出せぬまま、
人並みな結婚もできない自分は、うまれなければよかったのだと、
煮えるような涙を流すのです。
そして、暗い空に白い稲妻が一瞬の早さで遠く走る、、、。
暗暗鬱鬱な、どうしようもない湿気た空気、
まるでたちの悪いお酒に酔っていくような夢中さに浸りました。

林芙美子の作品はどれも夢中になって読んでしまいます。
どういう魅力なのでしょうか、魔法の薬が入っているみたいです。
ふとした瞬間の描写が心憎い文章となって、鮮やかに描かれます。
私の読書は偏りがあって、たくさんの本を読んだわけではなのですが、
これほどウマイ!と唸る文章を他で読んだことはありません。



by orochon3 | 2012-04-01 16:08 | | Comments(0)

主に戦前邦画と、思い切り偏った読書の感想などなど。近頃はもっぱらお酒ばかりで スミマセン。
by orochon3

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