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田辺聖子サンというと、
忘れられない文章があります。 「ゆめはるか吉屋信子」という 吉屋信子について記した評伝、 その著作の文庫版のあとがきの 後半部分です。 自分自身のためにも、 長いけれど抜粋します。 --------------------------------------------- 皇后さまは隣の席の私に 最近作をおたずねになる。 私は『ゆめはるか吉屋信子』を 書きました、と申し上げると、 <まあ、なつかしい名前!> と玲瓏たる皇后さまの美しい ソプラノがひびきわたった。 <吉屋信子さんは、わたくしの 少女時代の愛読書でしたのよ> そして、『花物語』『紅孔雀』 『桜貝』・・・とすらすら、 信子の少女小説のタイトルを あげられる。終戦後のこととて、 自由に本が入手できず、 友達と貸し借りあって、 <夢中で読みましたのよ・・・> いつか、皇后さまのお話に、 テーブルの人々は楽しく聴き入り、 天皇さまも微笑を浮かべられる。 皇后さまのお言葉は平易でありながら、 品格ある美しい日本語である。 明晰なご発音。そして珠を転がすような、 と古くから日本で愛用されている 美声の表現がいかにも似つかわしいお声。 信子の少女小説がいかにたのしく、 すがすがしくも美しかったかを 頰を染めて語られる。 私もつい、身をのり出してお答えする。 そうでございます、 信子は少女小説こそ、 力を込めて書きました。 手ぬきも妥協もしませんでした。 何といっても、<少女>に 読ませるから、と。・・・ ーー信子先生、聞いて頂けました? 信子先生の<少女>にそそぐ愛と情熱は 何十年後も読者の心を、 美しく染めるのですよ。 齢を重ねても、そのかみの夢見心地を、 女人たちは忘れないのですよ。 愛を、誠実を、女人の誇りを、 思いやりの心、いたわりの心、 それらのやさしみを、少女よ、 忘れないで、と訴えつづけた、 あなたの少女文学は、女人の心のうちに、 生涯の花を咲かせたのです。 私は心で<信子先生>にそう伝え、 席をおたちになる両陛下を、 テーブルの方々と共に起って、 お見送りしたことだった。 この幸せな思いを、 本書を手にとって下さった 皆様にもお伝えしたくて、 文庫版のために書き加えた。 ------------------------------------------------------ この文章を読むたびに、 私は胸がいっぱいになって 美智子さまと田辺サンと、 吉屋信子の、愉しそうな 笑顔が思い浮かびます。 厚かましく恐れ多くも、 私もご一緒のテーブルに つかせて頂いているような、 幸せな気持ちになるのです。 田辺サンが愛したものは、 すべてに優しくて、 幸せがいっぱい、です。 水無月のひんやりとした雨あがり 香りをはなつくちなしの花
by orochon3
| 2019-06-12 08:41
| 本
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